祈願(Foolish prayer)

願うな。




勝ち取れ。


願ったとき、それは既に手遅れ。
力の及ばぬ愚かしさ。無力が故の逞しさ。
哀れで無様な木偶人形。


人は願う。
金が欲しいと願い、合格を願い、
物欲は果てしなく、性欲はとめどなく、
名声を願い、失墜を願い、
無事を願い、再会を願い、
見逃してくれと願い、命乞いをし、
死刑を願い、無罪を主張し、
世界平和を願い、終末と浄化を願い、
極楽を願い、来世を願い、
願いの果ては果てしなく、全ての全てが利己的だ。
願うことは最ももっとも人間らしい。


全ての願いは限界の先。
極めた努力のその先に。
無力なものが力あるものに託す、それが願い。


願いを知って強くなり、
願うことで弱くなる。


強さとは願わぬこと。
それは限界を知らぬものの特権。
強さとは切り捨てること。
願いを知り、それでも叶わぬ夢を願わぬこと。
強さとは与えること。
他者の願いを叶えることは、ひどくひどく難しい。
強さとは孤独。
他人に頼らぬ孤高を貫くことは、愚かしくも美しい。


祈るな。


唾を吐け。


願いを叶える絶対的な偶像を生み、
全ての願いを一元化したもの。
それが祈り。


努力すらも放棄し、願いの前に限界を決め、
祈ることのみに力を注ぎ、
ただただ上を見上げ、諦める。
その姿はひどく滑稽で淫靡で醜悪。


偶像という名の幻想は、
いつかいつしか神となり、
思惟妄想の些細な差異が、
人の命を奪い合う。
そして、人は憂うのだ。
憂いて願い、祈るのだ。


神は願わず、人は祈り、
ゆえに人より先に神はなし、


願うな。祈るな。
勝ち取れ。唾を吐け。


夢に貪欲になれ。
願いに盲目になれ。
呪いの言葉は努力の証。